WCTイベントで最も歴史があるのがベルズビーチで開催されるリップカール・プロ。
その日最初のヒートでACDCのHells Bellsをフルで1曲ながしてしまう、その間サーファーが何本のってもスコアーのコールすらしない、ただひたすらHells Bellsが終わるのを待つ、変わったスタイルのイベントだ。
このベルズはウィンキポップ、ボウルズ、リンコンの3つのポイントからなる。
地元の人間が言うには、ウィンキポップが常に一番いい波だが、やはりベルズといえばボウルズ。
フェイスの長いパワフルな波で、干潮時がベスト、カービングや深いボトムターンがフィットするクラシックなサーフィンが最も観客から歓声をあびる。
今年のリップカール・プロは『Cheers Mick』のスローガンのもと全てミック・ファニングを中心に動いていった。
17年前にはワイルドカードでこのリップカールプロに出場し優勝した。
そして引退試合の今回もファイナルまで進み、結果は準優勝。
優勝しなかったとはいえ、語り継がれるには十分なストーリーだ。
ミックが乗るたびに観客は湧いた。でも対戦相手がいいライディングをすれば拍手と歓声がおこる。
Tabrigadeが知る限り、世界で最もサーフィン偏差値が高く、マナーがいい観客が集まるここベルズならではのことだろう。
ジョンジョンがジークに陰険なマークをされたとか、トップのジュリアンや去年優勝のジョディが早々に敗退したとか、ケリーは欠場したけどミックの引退パーティーに姿をあらわしたとか、なぜかいろいろと話題の多いイベントではあったが、もはや”ミック・ファニング最後の試合”という話題と比べてしまえば話にものぼらない。
それほど今大会は誰もがミックに注目した。
イベント前日の記者会見でもジョディ、ジョンジョンではなく、テレビ局、各雑誌メディアはミックへのインタビューに殺到した。
こんなにメディアが記者会見に来たのは初めてのこと。
その記者会見でのミックはメローな感じで、まーこれは話してる姿をみないとわからないので、宣伝じゃないけどこれからTabrigade Filmが編集するWater Frameの最新作を見て欲しい。
ラウンド4までのミックはなんとなく集中力にかけている少し危なっかしい勝ち方をしていたが、ウィルコ、パット・ガダスカスに勝ったラウンド4以降は急激にコンセントレーションを高めていった。
これは誰が見てもわかるほど、ワールドチャンプを狙ってるような高貴なほどのオーラがでていた。
ミックは写真のように、決まったルーティーンでヒート前に瞑想する。
ヒート12分前に登場し、観客が集まるエリアを離れ崖の前で座り集中する。誰かと話しているような瞑想風景は誰も2m以上近くには近寄らないし、近寄れない。
ただ2m離れた場所はメディアで溢れているのだが….
サーフィンはいつもと変わらない。ミスは少なく徐々にギアーを上げていくようないつものミックだ。
このカービングがしばらく見れないと思うと残念だが、ミックも今年37歳。やはり数年前と比べるとキレが落ちてるのは否めないので引退するには最高のタイミングだったのだろう。
Mick Fanning head to his final heat .
ファイナルも誰もがミックが優勝すると思っていた。
残り4分で必要なスコアーは7.15。
セットに乗ればミックならほぼ確実にでていただろう。
残り2分で小ぶりなセットが入って来たが、それに手をださなかったミックは本当に凄いと思った。
そのセットを見た観客は、これが逆転の波だと思ったが、実際それに乗っていてもいいとこ6点+だっただろう。
結局イタローにファイナルで敗れたが、最後までマシーンのようなコンペティターだった。
Cheers Mick !!